このハレー彗星は、太陽面を通過した際に尾の中を地球が通過することが天文学者により予言されていた。彗星の尾には有毒のシアン化合物が含まれていることが知られていた。特に、フランスの科学者、カミーユ・フラマリオン(1842年 - 1925年、日本のメディアでの表記はフレンマリオン)の説がもととなり、尾に含まれる猛毒成分により、地球上の生物は全て窒息死するという噂が広まった。日本でのその日時は、5月19日11時22分とされた。
またシアン毒説の他に、地球上の空気が5分間ほどなくなるという噂が一部で広まった。自転車のチューブを買い占め、チューブ内の空気を吸って一時的な酸素枯渇に備える裕福な者、水を張った桶で息を止める訓練をする者、全財産を遊びにつぎ込む者、世界滅亡を憂えて自殺する者などが現れたという。しかし当時の新聞記事を見るかぎり、大規模な騒乱などが起きたわけではない。[10]。この顛末は、1949年(昭和24年)、日本映画社製作の『空気のなくなる日』という映画に描かれている。また、『ドラえもん』33巻「ハリーのしっぽ」でも、ハレー彗星が接近した時、スネ夫の先祖がチューブを買い占める話や、のび太の曽祖父・のび吉が桶の水で息を止める訓練をする話が出ている。一方で「どうせ死ぬのだから」とばかりに、歓楽街が非常に賑わい、かつて無い盛況を見せたがために、花柳界では「嗚呼ありがたきホーキ星様」とハレー彗星が歓迎された。
海外でも、ローマ法王庁が「贖罪券」を発行したところ、希望者が殺到し、手に入れることができなかった人が悲嘆に暮れるあまり、自殺するという事件も起きている。中には酸素ボンベを持ち出し地下に逃げ込んだ人もいる。「彗星が持ち込むシアンの毒はこれで大丈夫」と、小麦粉を丸めただけのニセの薬を売って金もうけしようとした詐欺師がアメリカで摘発されたこともあった。またメキシコでは、「処女を生贄にすれば助かる」と信じ込んだ暴徒が、女性を襲撃する事件も起きている。
実際のハレー彗星は5月19日に太陽面を通過したが、彗星のガスは非常に薄いため、地球が尾の中を通過してもハレー彗星のガスは地球の厚い大気に阻まれて地表に到達することはなく、地球及び生命体には何の影響も与えなかった。
”- ハレー彗星 - Wikipedia (via hirai)